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壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第3話〜

〜前回までのあらすじ!〜

主人公・二階堂 薫は◯×商社に勤める「勤続10年・仕事一筋・一筋すぎて童貞」という新任若手課長!!
ひょんなことから二階堂は、壊滅寸前の第七営業部の再興と会社の一大プロジェクトのポジション争いを懸けた、運命の懇親会幹事に任命される!

何がなんでも懇親会を成功させたい二階堂は、犬猿の仲である第六営業部の飲み会を潜入調査することに!!
敵地真っ只中で動揺する二階堂(童貞)!!
そして営業部の敵対関係を知るはずもない新入社員の相方・一ノ瀬!!
果たして波乱必至の「第六営業部 飲み会編」の運命や如何に!? 

【登場人物】
・二階堂 薫(にかいどう かおる)・・・◯×商社 第七営業部の課長。学業と仕事一筋。そのため童貞。通称『仕事人』
・一ノ瀬 翔(いちのせ しょう)・・・◯×商社 第六営業部に配属された超絶美少女の新人。通称『飲み会のモーツァルト』
・五利 文明(ごり ふみあき)・・・◯×商社 第六・七営業部の部長。第七営業部を再興するため、二階堂に懇親会の開催を依頼する。実は大の甘党。通称『世渡り上手』

 カッチコッチ カッチコッチ…

夕方のオフィス。
◯×商社 第七営業部のフロアには秒針を刻む時計の音が鳴り響く。

「あと2時間か…」
二階堂はソワソワしながら、定時の18時半が来るのを待った。
今日は急遽、懇親会の相方・一ノ瀬の誘いを受けて隣の第六営業部の飲み会に参加することになった。
飲み会の開始は19時だ。

「あと1時間…」
飲み会までの時間が刻々と迫る中、それに比例するように二階堂の緊張も刻々と押し寄せて来る。

「あと30分…」
飲み会があるのは大体週の真ん中の水曜日だ。

今日も水曜日には違いないが、零細部署であるが故に人員が少ない第七営業部では、トップを張る二階堂に仕事の皺寄せが来ることは当たり前であり、また二階堂自身、めったに定時で帰ることなどなかった。
最終退出者を記載する名簿には、いつも二階堂の名前が並んでいる。

ピンポンパンポーン♪

『定時になりました。
業務にキリをつけ、速やかに帰宅しましょう』

それでも『仕事人』と呼ばれる二階堂は、業務に完璧にキリをつけ、帰宅を促すアナウンスと同時に「おつかれ!!」と即座に退社した。

珍しく定時で帰る二階堂を見て、オフィスに残された人達は「おそらく出先の打ち合わせに向かったのだろう」と考えたが、これから二階堂が向かう先が居酒屋だとは誰も思っていなかった。
むしろ二階堂も、地獄に向かう気持ちで約束の店まで歩みを進めるのだった…。

 

「ちょっと早すぎたかな…」

一足先に店の前に到着した二階堂は、ウコンを買うために向かいのコンビニに入り、そこのイートインスペースで時間を潰すことにした。

窓際の席に座ると、会社の方角から小走りでやってくる一ノ瀬の姿が見えた。
ハイヒールのかかとを上げ、爪先立ちで器用に走っている。

店の前に着いた一ノ瀬は、息を整える様子を見せてから店の中へと入って行った。
一瞬、横顔がチラッと見え、一ノ瀬の頬が少し紅潮しているのが分かった。

「何か手伝った方が良いだろうか?」

二階堂はそう思ったものの、幹事初心者の自分が手伝いに行っても逆に迷惑をかけるだけかもしれないと思い、悶々とした気持ちで開始時刻を待った。

開始5分前になった頃、第六営業部の面々がぞろぞろと入店するのが見えた。
二階堂は入り口の人混みが一通り居なくなったのを見計って、開始時刻ちょうどに店の中に入店しようと決意した。
しかし、二階堂は緊張からか足が鉛のように重くなっているのを感じた…。

「どうしよう………!」

このまま突撃して行って良いものだろうか…?
第七営業部の、よそ者の自分が入って行って、楽しい雰囲気をブチ壊したりしないだろうか…?

浸水した船のように、二階堂の脳内に余計な心配が流れ込んでくる。

飲み会中にグラスでも割ってしまったらどうしよう…?
お酌は注ぐべきか…?
いや、しかし注ぎに行ったところで嫌な顔をされてしまったらどうしよう…?

二階堂のフラストレーションは極限まで溜まり、気づいた頃には飲み会の開始時刻をもう30分も過ぎてしまっていた。

「いや、行くしかない…!!
このまま此処で待っていても何も起きない…!!
そもそも誘ってくれた一ノ瀬の顔が立たない…!!
あの笑顔を思い出せ、二階堂 薫!!」

二階堂はそう自分に言い聞かせ、不安を半分残したまま、それでも奮起して席を立った。

店に入ると和服姿の女性が「いらっしゃいませ」と丁寧なお辞儀で迎えてくれた。
チェーン店だが、落ち着きのある良い店だ。

「すみません、一ノ瀬で予約している思うのですが…。」

「はい、団体様でございますね。
ご案内させて頂きますので、こちらへどうぞ。」

店内にはジャズのようなBGMが流れている。
座敷の席も多くあり、和風な造りだがテーブル席も幾つかあるようだ。
しきりが付いていて、全席個室のような形になっている。

「こちらになります。」

店の一番奥の席の襖(ふすま)の前まで案内されると、二階堂は大きく深呼吸をした。

ここを開けると、とうとう聖戦が始まる。
果たして天国か、地獄か…。

 

ガララッ

 

「失礼します!!」

二階堂は緊張した面持ちで個室の扉を開けた。

すると目の前に広がった光景は…!!
全員が分け隔てなく笑顔で会話をしている楽しげな宴…
なんと和やかで暖かな雰囲気か…!!

その様子を見て、二階堂の頭の中にはモーツァルトの『フィガロの結婚』が流れ始めた。

「これが…一ノ瀬が『飲み会のモーツァルト』と呼ばれる由縁…!?」

 

「あ!二階堂課長!!」
いち早く気づいた一ノ瀬がパッといつも以上の明るい笑顔で二階堂を出迎えた。

ビールの空き瓶を片付けていた手を止め、近くの先輩達の肩をポンポンと叩き二階堂が来たことを伝えている。

「何!!?
二階堂さんが!?」

その中で一段と大きなリアクションをとったのは『三宮 衛(さんみや まもる)』という若手営業マンで、第六営業部でもトップの成績を誇る将来有望なエリート社員だ。
体格の良いスポーツマン風の若者で、特徴的な角刈りが実直さを感じさせる。

三宮の声に反応して、二階堂の存在に気づいた他の連中も声を上げ始めた。

「おお!二階堂さん!!」
「何!?第七営業部の二階堂課長が来ただと!!?」
「スペシャルゲストだ!すごい!!」

「???」
二階堂は湧き上がる歓声に戸惑いを隠せず、目を白黒させた。

「これは一体…??」

「二階堂課長、こちらへ来てください!!」
そう一ノ瀬が手招くと、二階堂は言われるがままに三宮の隣の席に座った。

「二階堂課長、光栄です!
今までずっとお話する機会がなかったので…!」
嘘偽りのない、熱い敬意を三宮から感じる。

「お、おぉ、確かに話す機会は無かったね…。
しかし、この盛り上がりは一体??」

「みんな二階堂さんと話したかったみたいですよ?」
そう言って一ノ瀬がにっこりと笑うと、場が一瞬で暖まった気がした。
体感温度が3℃くらい上がった気がする。

「そうなんです!!」
更に気温を100℃は上げる勢いで、三宮が熱弁を始めた。

「役員連中をはじめ、社の連中が『第六と第七営業部は犬猿の仲』と要らん噂を流しているおかげで、なかなか話しかけに行って良いものか迷っていたのですが…。
五利部長の右腕で、全社内でも『仕事人』と呼ばれる二階堂課長の職業観については是非色々なお話を伺いたいと心底思っていました!!」

「そうなのか…」
二階堂はこれまでの噂が、当人同士では全く事実無根の情報だったことに安堵して胸を撫で下ろした。

と同時に、二階堂の頭に2つの疑問が湧いた。
1つは、なぜこれらが嘘やデマであったことが分かったのか…?
そしてもう1つは、誰が何のためにそんな噂を流したか…?

兎にも角にも、波乱の第六営業部の飲み会が無事に終わりそうなことに安堵した二階堂は、その日溢れんばかりの笑みをこぼして、酒もこぼしたらしい。
その後の第六営業部と第七営業部の仲に関しては、次のお話にて…。

 

次回!
波乱の「第六営業部 飲み会編」が無事に終わり、安堵する二階堂!!
しかし、そこで見えた黒い影と、狙われる一ノ瀬!!
果たして、急展開の飲み会準備編はどんな結末に!?
そして次回、二階堂、死す!?

To be continued

[バックナンバー]
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜プロローグ〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第1話〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第2話〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第4話〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第5話〜

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